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「レイド、金――」
「無理」
「まだ何も言ってねぇっ!」
「全部聞かなくても分かりますぅ。お前に貸す金なんてありませんー」
俺が、一番仲が良いと思われる友人――レイドニアス・ルーディンにこの窮地を救ってもらおうと、話しかけた矢先にこれだ。もう以心伝心なわけだな。俺って男は、そんなにいつも友人に金を借りる奴だったのか。
レイドが居たのはいつも俺達がたむろってる酒場で、奴はそこそこの値段の酒を口にしていた。今の俺じゃ到底手の出ない酒だ。羨ましすぎる。一口で良いからくれないかな、とか侘しいことを考え始めていた。
「じゃあ、せめて酒奢ってくれ」
「嫌」
「……お前、俺の友達じゃねぇの?」
「ヴァース……友達にたかるな」
酒も奢ってくれない俺の友人は、邪魔だといわんばかりに、あっちに行けと手を前後に振っている。
しかし、ここで帰るわけにはいかない。帰ったところで、俺にどうこう出来るわけじゃない。ダメもとでしぶとく纏わり付くことにした。
気付きたくはなかったが、俺ってつくづく侘しい人間だ。それもこれも、全部貧乏のせいなわけで。でもその原因は俺なわけで……。本当に貧乏って最低だ。
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