金がない

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「一番安い酒でいい」 「帰れ」 「お願いします、ついでに何か食い物も」 「何だ、その厚かましさ! ウザいなっ!」 「ウザくねぇっ! こっちは死にそうなんだ、必死なんだよっ!」  とうとう俺は逆切れも甚だしく、酒場で大声を出した。そんな俺の態度にレイドは黒髪を揺らしながら、呆れたように首を振る。光を反射している部分が紫色に光っている。  そして俺は、何人かの俺を見る好奇の視線に気付く。しかもレイドは他人の振りを決め込んでいる。  恥ずかしさと怒りに、俺の握り締めた両手はわなわなと震え始めた。 「お前、俺に恥かかせたいのか!?」 「勝手に騒いでるのはお前だろ!」 「一口、一口! ひ・と・く・ちっ!」 「か~え~れ~!」  酒場の人々は、俺達のコントにますます興味を示している。  何処にでもありそうなこの酒場は、それでも俺達のような傭兵には手頃なこともあって、なかなか繁盛している。  もっとも、ここに来る男共のほとんどは、看板娘のシェリスを見るのが目的なんだが。もちろん俺も、当初はそういう理由でここに来ていたが、今ではすっかり、彼女と友人になってしまっている。
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