金がない

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「お前、残金いくらだ」 「え? なになに、貸し――」 「貸さないけどな」  こいつは、普段は割りと面倒見の良い兄貴みたいな奴だが、何故だか金だけは、なかなか貸してくれない。  何の理由があるのか俺は知らないし、知りたいわけでもねぇが、何か信条があるんだろう。別にケチって訳でもないんだし。  とりあえず、聞かれたことに答えようと、自分のポケットから俺の全財産を取り出す。コインは、さっき数えた時から増えても減ってもいなかった。 「えーっと……八二五ドール」 「……ポケットに入ってる分じゃなくて、全財産だ」  おいおい、こいつ今なんて言いやがったよ。ポケットに入ってる分じゃなくて全財産? 「これが全財産なんだよっ、バカ野郎!」 「……マジか」 「だから金貸してくれって言ってんだ!」  レイドは俺を、かわいそうなモノを見る目で見てやがる。そんな目で見るなら、是非とも金を貸していただきたいもんだ。そんな視線をくれたところで、それが金になるわけじゃないんだから。 「人間の所持金じゃねぇな」 「悪かったな! とにかく、頼むから金貸してくれって」  レイドの呆れた様な声が耳に痛い。ついでに胸にも痛かった。
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