12人が本棚に入れています
本棚に追加
後に帝国陸軍と一戦交える事になるメリケン軍とは異なり、帝国陸軍にはクリーニング等というありがたいものはない。
当然分隊の洗濯は、一番の新入りである堂麟と興津の仕事であった。
堂麟と興津は今営内の洗濯場にて、分隊全員の洗濯を行っている最中であった。しかも一枚一枚手洗いで…
「よっこらせ、と」
「大丈夫か十河?
さっきは災難だったな」
同じ営内班に配属された同年兵
興津五郎太(おきつ=ごろうた。)二等卒
が声を掛けてくる。やがて堂麟が口を開いた。
「仕方無いさ。何処でも新入りはこんなもんだろ。
…最初は面食らったがもう慣れた」
「早いな…」
ここぞとばかりお喋りに精を出す堂麟と興津。何故なら営内班で同じ事をしようものなら、たちまち
「娑婆気が…」
と、例の乙保稲一等卒が嬉しそうに吹っ飛んでくるからである。
「庫内員も似たようなもんだったよ。数が桁違いだがね」
「庫内員!?
そうか、お前娑婆では地鉄の車掌だったって言ってたもんな。
…それにしても凄いよお前」
最初のコメントを投稿しよう!