営内班。

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 後に帝国陸軍と一戦交える事になるメリケン軍とは異なり、帝国陸軍にはクリーニング等というありがたいものはない。 当然分隊の洗濯は、一番の新入りである堂麟と興津の仕事であった。 堂麟と興津は今営内の洗濯場にて、分隊全員の洗濯を行っている最中であった。しかも一枚一枚手洗いで… 「よっこらせ、と」 「大丈夫か十河? さっきは災難だったな」 同じ営内班に配属された同年兵 興津五郎太(おきつ=ごろうた。)二等卒 が声を掛けてくる。やがて堂麟が口を開いた。 「仕方無いさ。何処でも新入りはこんなもんだろ。 …最初は面食らったがもう慣れた」 「早いな…」 ここぞとばかりお喋りに精を出す堂麟と興津。何故なら営内班で同じ事をしようものなら、たちまち 「娑婆気が…」 と、例の乙保稲一等卒が嬉しそうに吹っ飛んでくるからである。 「庫内員も似たようなもんだったよ。数が桁違いだがね」 「庫内員!? そうか、お前娑婆では地鉄の車掌だったって言ってたもんな。 …それにしても凄いよお前」
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