12人が本棚に入れています
本棚に追加
お喋りと同時に手も動かす二人。こうでもしないと次の課業に支障が出るのだ。
ストレス解消をしながら
次に何が来るか?
…と神経を使う状態に早く慣れなければ心身が保たない。
「しかし、何だって丙の野郎は俺を目の敵にするんだろうな?」
「三島上等卒殿の話だと、丙の奴かみさんに逃げられたそうだ。そのかみさんの兄貴がお前にそっくりなんだってさ」
「…とんだ逆恨みだな。迷惑も甚(はなはだ)しい。そんなことだからかみさんに逃げられるんだなあの威張り虫」
因みに『丙』とは乙保稲一等卒を表す二人だけの暗号である。
幾らお喋りが大目に見られているとはいえ軍の敷地にいる事には変りがないから、何処で誰が聞耳を立てているか判らないのだ。
他人を陥れて自分達だけ得をしようとする連中がいるのは、何も人間界だけではないのである。人の嫌がる軍ともなれば尚更であった。
最初のコメントを投稿しよう!