営内班。

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 この十河堂麟というアズマモグラは年齢こそまだ二十歳ながら、実に波瀾万丈の半生を送っている。 明治84年(人間界の西暦1952年。または昭和27年。帝国ことモグラ世界では、当時も現在も明治の年号が用いられている)の春。16歳でモグラ地鉄に入社した堂麟は、実家からそう離れていない地鉄小田原機関区に庫内員(こないいん。機関区の雑用係)として配属された。 庫内員の主な仕事は、蒸気機関車のボイラー内にこびりついた燃えかすの清掃である。 モグラ地鉄の蒸気機関車は酒炭(さけたん。濃縮固形アルコール燃料の通称)を燃やす事により蒸気を発生させて動かす仕組みであるから、庫内員はそれこそ髭の先まで真っ赤になりながらボイラー内を掃除しなければならないのだ。 とんでもない重労働であり落伍者も珍しくないから、半年後には堂麟と一緒に小田原機関区に配属された仲間の半分が地鉄を去っている。
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