第二章

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ちょっ…!このゴリラ顔っ!! この前の俺たちに頼み事したおじさんじゃん! 「ちょっ…おじっ…」 俺が思わず話しかけようとしたところを、守が俺の口を手で塞いできた。 なんだよっ!って顔をして、守を見ると、首を横に振っている。 …あぁ、知らないふりしろってか? そうだよな。俺たちが前に会ったおじさんは死んだ人だし。 今、前にいる人は俺たちを知らないからな。 「君たちが入隊希望者かい?」 「「はい」」 相変わらずこの人はゴリラ顔だ。 でも笑顔が温かい。 「俺は近藤勇だ。ここの局長を勤めている。 一つ…君たちに聞きたい。 君たちは、何のために戦う?」 戦う…か…。 そうだよな、ここ、江戸時代だし。 戦わなくちゃいけないのか。 もしかして…人を切らなくちゃいけないのか? でも、切らなくちゃ生きていけない。 改めて考えると、とんでもない時代にきちまったな…。 「僕は…大切な者のために戦う。 それが…僕の誠です。」 守が真剣な表情で近藤さんを見つめた。 それなら俺の誠だって… 「俺だって… 大切な者のために戦う。 俺の誠だ。」 俺も近藤さんを見つめた。 近藤さんは笑顔で頷いている。 「そうか…君たちの大切な者とは、お互いなんだね? ここに住んでいる者は皆、俺は家族と思っている。 皆、俺にとっての大切な者だ。 きっと君たちにとっても大切な者になるだろう。」 俺たちに幸せにしてほしい家族って、ここの人たちだったのか…。 頑張ってやろうじゃん。 幸せにしてやんよ。
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