がくせーのほんぶん。

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清治が炎天下の下で一同級生の撃破に闘志を燃やしている頃、登と田浦の二人は片手間に勉強しながら雑談していた。 時折思い出したように問題を 解 こ う と す る 程度なので『片手間』とすら言えないかも知れないが。 これで合っているのだろうかと首を傾げつつノートに答えを書き入れ、登はそうだ、と顔を上げた。 「話は変わるけどさ、田浦の成績が下がったのって何でさ? 悩み事があるなら聞くよ?」 「え……あ、いや、授業に集中してないとか、そう、高等部に上がって教室が変わったじゃない? それで集中出来なかったのよ」 「……そうか」 大問題ではないな、自分が関わる事でもない。と自己完結する登。 言い訳じみていたと感じているのか、田浦は 「色々あんの!」 と会話を打ち切ろうとして 「……色々?」 食いつかれて失敗した。無様である。 「アンタには教えないわよ、アンタには」 「それはそれで悲しいんだけどな……」 自分は信用されてないのか、とふさぎ込む登と、それに構わない田浦。 「しっかし木村っちも優しいよねー。 いくら私達の成績がこんなに低いからって、普通はわざわざ勉強会開いてくれたりしないと思うし」 「少し万能過ぎるんじゃないか、清治は」 そう呟く登の声は、僅かな羨みを含んでいて随分と暗い。 「ほんっと、私が惚れてないのが不思議なくらい」 「……ん?」 「アンタが詮索すんなっ!」 妙に反応した登に対して田浦が僅かに顔を赤くして怒鳴り会話が途絶え、二人とも問題集に向き合う事となった。
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