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アスファルトの照り返しに苦しめられ、数分の道のりにも関わらず数時間にも感じられた帰り道をようやく踏破して寮に辿り着くと、揃って頭を悩ませている最中の二人がいた。
登が参考書をひたすらに読み返していて、根は真面目なヤツだと思い出す事になった。
二人とも僕が帰ってきた事に気付いてない位には集中してるみたいだ。 感心するね、普段の集中力の無さに。
「なかなか頑張ってるじゃん。 で、期末は余裕そうかな?」
取り敢えず今日はグレープフルーツ、とグラスを机に置きながら登の解答を覗き込み結論付け、問題集から視線を外そうともしない田浦のノートにも目を向ける
「清治、音もたてずに現れるなよ
寿命が縮むかと思ったぜ……」
やはり気付いていなかったか。
でも、登はそのビビり具合を何とかしてくれ、と思う
毎度毎度幽霊でも出たかのように驚かれるとこっちが申し訳なくなってくるし
「田浦、飲み物持って来たぞ?」
「……あ、ありがと
てか木村っち帰って来てたんだ」
普段通りに動いている僕に気付かない二人が暢気なのか、それとも自分が神経質なのかを悩んで数秒。
「……もっと遅くても良かったのに」
始まるであろう地獄を嫌という程知っているからこそであろう辛辣な台詞を吐かれ、折れかかっていた心が粉々に砕け散った音を聞いた。
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