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「テスト勉強しろよ。もうすぐ期末のテスト期間が始まるぞ」
中間テストの時の成績を思い出したのか、親友はスプーンを持ったまま固まり
「……あれは、悪魔だ。鬼だ。物の怪だ。」
左手を額に手を当て、苦々しげそう呟いた。
そんな彼を一瞥して会話から昼食に戻る。
昼休みもそんなに長くないし。
ぶっちゃけると、登の成績は最下層といっても過言ではないかもしれない。
「テスト期間でもないのにわざわざ勉強するようなヤツがどこに居る、っての。 気が付いたら赤点ギリギリだっただけさ」
曰く、『テスト期間以外に勉強するのは損』
典型的な面倒臭がりだ。
テスト期間にすら勉強しないヤツがそんな大口を叩けるとは思えないけど
「清治はズルいんだよ。
何もしなくても80点超えしていくし、提出物も出してるし」
「登は真面目に授業を受けろ」
「それが出来たら苦労しないっての」
『笑ってないで少しは努力しろよ』なんて僕が言ったって、簡単に変わりはしないと思うけどね。
「価数とか共有結合とかmolとか全然わかんねーし」
「ちょっと待とうか登、それは死活問題だ」
「……そうなの?」
表情を見る限り、とぼけている訳ではなさそうだ。
最重要単語を『分からない』と言い放つ彼はもうダメかもしれない。
幸いにもまだテストは始まっていない。
手遅れになる前に気付けた安心感と、彼の今の学力に対する心配
先の発言も相俟って、『早くなんとかしないと』という焦りが生まれた瞬間だった。
つい半年前、中等部卒業時に僕が危惧していた事、それは『高等部に上がったとして登は果たして勉強するのか』という、至極単純なもの。
山口先生は言っていた。 勉強の質を変えろ、と。
三ヶ月で再開するつもりは無かったけど、仕方ない。
「今日から勉強特訓な?」
「え゙」
高等部入学出来るかどうかの瀬戸際をふらついていた登を余裕エリアまで引きずり上げた『清治の特訓』その早過ぎる再開が決まった初夏のある日。
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