呆気ない、

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昔は綺麗な澄んだ水を湛えていたのにな 僕はそんな事を考えていたため、周りの異常に気付けなかった ――正確に言えば、そんなに広くない道をこっちに向かって爆走してくるトラックに。 「っ!!」 ガードレールを跳び越えて沼の周りの斜面に着地した僕のすぐ横を、走る凶器となったトラックがガードレールを壊しながら通り過ぎていく。 危なかった…… 心臓が激しく拍動しているのは、いきなり生命の危機に晒されたから。 夏休みが始まるってのにこんな事に遭遇してしまうなんて バキリ 「ホント、なんなんだ――ぅわ!」 暴走していたトラックとの接触によって破壊されたか、支柱を外れたガードレールが斜面を跳ねて飛んできて、思わず後ろへ跳んで避ける―― バッシャアァン 自分が水際に立っていた事に気付いたのは、視界が緑色に染まってからだった。 肺に流れ込んで来る濁った水 水を掻いても全然浮かび上がらない体 堪え難い苦しみの中で突如として右腕に走った鈍い痛みに視線を右に向けると、白く輝きながら水底に沈んでいくガードレールが見えた。 ……追撃のつもりか、おい。 暗くなっていく視界 薄れていく意識 生きたい まだ死にたくない 僕は、まだ死ねないのに 姉さんと豊兄が命を捨ててまで守ってくれた、大切な命なのに でも、もう無理かな 腕に力が入ら な い  や 木村 清治、15歳 呆気なく、溺れました。
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