予感

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ザザ パシャ ザザザ…… ザザ ザザザ…… 波の音が聴こえる。 水辺なのかな? そりゃ、『沼』で溺れたんだから当たり前か。 案外簡単に溺れるもんなんだな、人って 昨日はスイスイ泳いでたっていうのに。 まぁとにかく、生きてて良かった。 危うく死ぬ所だったよ。 ……しかし、よくあんな状態から助かったな。 普通ならあのまま窒息してデッドエンド直行だっただろうに。 ガードレールがぶつかった右腕が痛いな この調子だと傷跡とか残ったりして。 そよ風が心地好い…… でも、なんなんだこの違和感は 何かを忘れているような、何かに気付きそうな、不安な気持ちは…… 山口先生に漢字を詰め込まれて何か大切な事を忘れたかな? それなら大問題だ、すぐに思い出さ、 ――ちょっと待て 『沼』は貯水池だ。 風で水面が波立つ事はあっても、波が岸に打ち寄せたりはしない つまり、こんな規則正しい波の音なんて有り得ない。 第一、これは海の波音じゃないか!! 飛び起きた僕の目に映ったのは 弧を描く切り立った崖 狭い三日月を思わせる砂浜 どこまでも広がる大海原 そして、理不尽なくらいに澄み切った空 僕は、砂浜の真ん中に一人、全身に海風を浴びながら立っていた。 一旦、落ち着こう。 こんな景色を、僕は、知らない。 少なくとも日本にこんな色の海は、無い。 だとしたら ……此処は、何処だ
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