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……いやいやいや、なんで?
『沼』は貯水池だ。
だから勿論、そこから流れ出る水流なんてありゃしない。
だから僕は浮かぶとしたら『沼』の岸じゃないといけない筈だ。
じゃあ、僕が一旦『沼』の岸に打ち上げられたとして、なんで此処にいる?
誰かが運んだとしか考えられない。
誰が?
一体何の為に?
身寄りもない一般人の僕を?
……ホントは気付いてるよ、あんな状態から助かるのは奇跡が起こっても無理だって。
肺の中が水で満たされて気を失った人間が、あんな『小さな池』で『岸に打ち上げられて』『自力で肺の水を吐き出して蘇生する』なんて事、起こる筈がない。
それに
あの壁のような崖に無数に開く穴は、恐らく銃眼だ。
自然にあんなに『四角い穴』が『規則正しく』開く訳がない。
爆薬の誘爆を防がなくちゃいけないから、あんなにも銃眼を密集させた要塞は僕の知っている限りどこにも存在しない。
そして
今日は半月だった
で、今は夕方の筈だろ?
じゃあ何で『空に月が無い』?
無意識に目を逸らしていた真実それは
・・・・・・・・・・
此処は地球上じゃない。
ここは天国?
他の死者達はどこだ?
そんな考えが脳裏を過ぎるが、頭を振って追い払う。
まず人間が死んだ後で罪と善行で行き先が決まるなんておかしい
善悪は個人の主観だってのに。
……でも、地獄ってセンはありかもしれないな
再度周りを見渡した僕の目に映ったのは、紫色の――
――2mを越す蜘蛛だった
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