がくせーのほんぶん。

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「お前の特訓はシャレにならないから!」 「つべこべ言うな。赤点ギリギリの方がよっぽどシャレにならないだろ?」 軒並み危機的な登の成績では、エンドレス補講地獄に堕ちかねない。 「特訓だけはご勘弁!」 確かにスパルタだった事は否定しない。 逃げたくもあるだろう。 登は努力家ではない。 でも 「成長に努力は付き物だ、諦めろ」 何とかしてここで言質を取らないとコイツは逃げちまう。 それだけは避けないとッ! 「俺は逃げる、自由の為にっ!」 「さぁ今が年貢の納め時、今日からみっちり―― 「はい食堂で騒がない! でさ、特訓ってなんのこと?」 言い争っていた僕らを止めたのは、もう一人の親友にして頼りになる常識人 田浦 美咲 茶色がかったセミロング、サバサバした態度で話しやすい女子だ。 随分と長い付き合いになるので、言わば幼なじみ、といった所だろうか 家族と言われても納得してしまいそうではあるが。ポジションは姉貴。 「いや、コイツのテストの点数がとんでもない事になってるからさ、ここで言質を取って僕の特訓から逃げられないようにしておかないと、と思って」 「そんな考えあったの!?」 学食の安っぽい机に肘を突いて興味深そうに僕ら二人の会話に入ろうとする田浦に説明する 登がなんか喚いてるけど気にしない。 「あー、あの特訓ね 昔はお世話になったわねー」 (成績的な意味で)田浦には何度も勉強を教えている。 いつからか『特訓』という簡潔かつ端的な呼ばれ方をするようになったが、田浦の成績が良くなったためにしばらく封印されてきた最終兵器だ。 内容は簡単、僕が毎日勉強を教えるだけ ただし、田浦曰く『濃さが半端じゃない』とのこと。 最後に行ったのは、登の高等部進学に不安を感じた今年3月 ……まぁ、『え゙』なんて驚かれてしまう程にキツイものになっていたのは予想外だったけども 「今回は登が対象かな」 「登っちって一体何点取ったのさ、木村っちが本気出すなんて」 田浦美咲の特徴として、二人称三人称が『苗字 + っち』だったりする。 とってもフレンドリィ。 「数学が33点、化学が36点―― 「なんで今言っちゃうかな清治は!?」 「聞かれたって何も減りゃしないよ。 自分の成績の心配してろ」 やはり喚く登を宥め、今回のテスト範囲を確認しつつ残りのチャーハンを掻き込んでゆく。 ……しょっぺぇ
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