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僕の知らないうちに親友達の学力はクラスの底辺付近まで急降下していたようで、早々に始めないと期末が、進級が危うくなってくる。
取り敢えず問題を解かせたいから……
「二人とも、自分の問題集を持って来れる?」
「「ゴメン、無くした……」」
二人で顔を見合わせるでもなく、鞄の中身を確かめるでもなく、申し訳なさそうに即答する二人
夫婦漫才かと思う程に息ピッタリ、わー凄い凄い
……シャレにならない。
登のは床に散らばってる彼の教科書達から探して拾い上げる。
あったあった。 ……さて。
この炎天下で女子寮まで問題集を取りに戻らせるのはキツイだろうし……
どうせ二人とも解くのは遅いんだ。
「……じゃ、登の問題集を使いまわして
最初っから期末テストの範囲まで全部解いて」
「……まぢスか?」
「木村っち、それキツイ」
「期末テストで赤点を取って、あの『Ωの煉獄』を受ける?
それとも僕の特訓で回避する?
……どっちか、選べ」
「「………………」」
突き付けたのは最凶の選択肢。
押し黙り、まるで鏡のような完璧にシンクロした動きで顔を見合わせる二人
まるで『どうする?』とアイコンタクトでも交わしているようだ。
……いや、何で悩むの?
この学園で一番厳しいと噂されている数学教師、尾芽 正彦。
学園内でも有名な彼の補習のキツさは、『野球部の無限ノックと同等』とまで言われてしまう程。
決して、一クラスメイトの勉強会と天秤に掛けられる事はない筈なのだ。
まさかアレと同等に見られてるとは……
泣きたくなってきたな……
「……解かなくてもせめて、読むだけでもやっておいて」
冷蔵庫のジュースは昨日切れたからな
買いに行かなくちゃ。
山積みの未知の問題(授業を聞いてなかっただけ)を前に不安げにしている二人を横目に見ながら財布を持って部屋を後にした。
このままこの部屋にいたら心が砕けそうだ。
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