がくせーのほんぶん。

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初夏の陽射しに照らされて眩しい大通りを眺めながら思う。 ふと気が付いたが、この街には飲食店がない。 つまり、自炊しない生徒は学食を利用するしかない。  まさか、奨学金を学食で取り戻そうとしてるんじゃああるまいな…… そんな脈絡も意味も無い疑問に意識を集中させているのは、6月らしからぬ晴天から容赦無く降り注ぐ日差しが予想以上に暑いって理由があるからか もしくは、親友二人の学力が本気で心配になってきたから現実逃避でも始めたのか。  授業内容を理解したら問題の理解も速いと思うんだけど、如何せん授業には集中出来てないみたいだし  毎日授業内容を叩き込む必要があるのかな  二人とも頭は悪くないのにな……授業ってそんなにつまらないかな?  ……ま、今から過ぎた事を言っても始まらないか そんな事を思いながら街に一つしかないスーパーに入り、飲料コーナーを目指す。  今日買うのはジュースだけ  ……特売肉とか半額の南国果物とかは、無視、無視。 寮で自炊生活してる身としては、安い物があると目移りするし視線が釘付けになるし、買わない日は目に毒だ。  ……だからステーキ肉から目を離せ、僕。 「適応してるなぁ……」  やたらと主夫臭い自分に気が付いて思わず笑いが零れた。  ……二人ともちゃんと勉強してるかな?  あの二人は根は真面目だからちゃんと問題集に向かってると思うし、あんまり心配はしてないけど…… ほぼ強制的に勉強させている側から大口を叩くのは乗り気ではないけど、留年は回避させなくちゃならない。 だから、多少の無理は通すと決めた。  確か、田浦は炭酸が苦手だったな  登は……基本何でも飲むけどリンゴにはうるさいし、グレープフルーツにしておくか。 会計を済まして店から出ると、熱波が押し寄せて来るような錯覚を覚え、店内に逃げ込みたくなる。  もう梅雨明けかぁ…… 期末テストという山を越えて、プールの授業がある僅かな七月を乗り切ったら夏休みになる。  クロールのタイム、新井に勝てるだろうか? 今夏プールでの最大の目標、チャラ男撃破。 連勝者が撃破を掲げるのは、かなり滑稽だった。
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