一章一話 疑似恋愛

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 病んでるとはいえ、妹を見捨てて逃げる俺は酷い兄ですか? はい、そうですね、わかります。  今後の為に反省はしよう。だが、後悔はしないっ! じゃないとボク、無限の彼方へ連れ拐われますからぁぁっ! 残念!(←古いが気にするな)  兄に病んでる妹が、死後も兄の事を求めてさ迷い、兄属性の男を襲う事件が発生。はい、新たな都市伝説の誕生ですね、わかります。  そんな未来は未然に防ぐべきなのだろうが、俺には杏子といる未来しか見えていない。俺は俺の道を逝く!!  たとえ、この先がデッドエンドでも、自分の意思だけはしっかりと持たなければいけない。負けるな、俺!  そういうことで、俺は撫子の気配がしなくなるまで走っていた。      ◆◆◆  携帯ゲーム機片手に一人で残りの旅路を突き進む。耳にはイヤホン。ソフトは『杏子だけを見て! 2人目の妹は殺人狂♪』と言い、杏子シリーズの二作品目だ。詳しい説明はメンドイから省略するが、要するに、新ヒロインの妹が完璧超人でヤンデレらしい。既視感を感じるが、たぶん気のせいだ。 『もぅ、お兄ちゃんは杏子だけを見てればい・い・の!』  オーケイ、マイエンジェル。そのファッキン主人公は死んでいいが、俺は永遠に見つめ続けるぜ!  ゲーム中の俺は画面だけを一所懸命に射抜くような眼差しで見つめているが、足は止めない。んな事したら遅刻してまうがな。  え? 前を見ないと危ないって? 何を言ってやがる。俺は、この時間の為だけに心眼を会得しているんだぞ。普通の通行にはなんの支障もきたさないぜ。
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