記憶の断章~惨劇の断片②~

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記憶の断章~惨劇の断片②~

 これは、遠い過去の話。“私”がまだ“ヒト”だった時の記憶の断片。  未だ細かい仕草までも忘れられない“彼”との記憶。  あの頃は何もかもが楽しく、“彼”を見つけるとドキドキした痛く、気持ちのいい感情。私は、彼が好きだったのかもしれない。  だからあの時私は、“彼”が傷つくのが怖かった。泣き顔なんて見たくなかった。  彼が全てを忘れ、この街から去ってくれて安心した。だけど、凄く心が痛くなった。嗚呼、私は、“彼”の事が本当に好きだったんだな。  なのに、“彼”が帰ってきた。帰ってきてしまった。私の事を忘れているのに。私は、“彼”を遠ざけたいのに、“彼”と一緒に居ると、幸せな気持ちになってしまう自分がいた。  もう“彼”の事が好きと言うわけではない。私の“心”は、“ヒト”を辞めたときになくしてしまったのだから。
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