夏の思い出は幽かな香りを漂わす。

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自転車を走らせ溜まり場に向かう。 目印なんて無いような農道を走り、川の水が増水しただけでも存続が危ぶまれる橋を渡り、夏なのに生い茂る樹木達のおかげで涼しくなっている山に入る。 自転車で来れるのは山道が続いているとこまでなので、自転車を置き、急な坂を歩いて登る。 少し歩くと僕らの秘密基地(高校生にもなってその呼称はどうかと思うが)にたどり着く。 秘密基地は薄い板金板で作られた小屋で、僕らがまだ小学生のときに僕ん家の近所の木こりのおじいちゃんが腰を痛め、木こりを辞めたさいに使わなくなった作業場を無料で提供してくれた。 なんでも、やっぱり餓鬼と言ったら秘密基地、という台詞と共に譲ってくれたのだ。
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