1…画家と化猫

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 飴色の跳ねた髪がふわりと揺れて、飴よりも深い瞳はぱちりと瞬きを繰り返す。  白いハイネックのノースリーブに、深い青のパンツ、白に栄える永劫を摘み取ったような赤い数珠が首と腰を彩る。  首から下げた数珠に着いた青い房が、振り返った彼と同時に小さく揺れた。  水に濡れ、絵の具によって色を残した手を水道脇の小さな物干しに掛けられたタオルで拭い、中央にある机に無造作に置かれた羽織りを手にして「どなたがいらしたんですか?」と黒猫に問う。  所々に絵の具の付いた白地の羽織に袖を通すと、足を廊下の階段へと向ける。  草履を脱いで、冷たい板張りの床を素足で感じる。  黒猫は慣れた動作で地面を蹴ると、白く揺れる赤月の肩に飛び乗って面倒臭げに呟いた。 「坊主だ。まったく、今度はどんな無理を押しつけてくるのか嫌になるねえ……」 「基宋(きそう)様ですか? 駄目ですよ、マチコさん。仏門もお忙しいのだから仕方ないです」 「……だがあやつの依頼が来るたび、お前は寝る暇すらなくなる」  心配だと言う黒猫――マチコに赤月は大丈夫だと笑いかけながら、廊下の突き当たりにある玄関へと足を向ける。  ひとりひたりと足を進め、玄関に出る。  そこには無言で立った袈裟を纏った黒衣の坊主と、銀に輝くふわふわの長い髪を赤い紐で結った青年が坊主に向き合うように座っていた。
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