1…画家と化猫

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 青年は黒いノースリーブに、赤い長布を纏って坊主を見ていたが、赤月の出現に美人と形容したくなる整った顔を綻ばせた。 「片付けは終わったのかい?」 「大方片付きました。お待たせしました、基宋様。どうぞ上がってください」  赤月が頭を下げて先を促すと、マチコは青年の方へと飛び移る。  優雅に座る青年の足の上に着地すると、彼の手がマチコを抱き上げて立ち上がる。  整った顔に、銀に栄える青い海のような瞳が、赤月と坊主を見る。  坊主は眉間に寄せた皺を深くして、きつい印象を与える威圧的な目で赤月を見ながら家に上がった。 「邪魔する」  赤月が先に立ち、向かってきた廊下に面した部屋の襖に手をかけて、静かに扉を引いた。  中央に低い机、そして座布団が数枚置かれた客間に基宋を通し、次いでマチコを抱いた青年が足を踏み入れる。  最後に赤月が中へ入ると、静かに襖を閉めた。  電灯で照らされた簡素な和室。  廊下に面して襖があり、僅かに開いた障子の奥には赤月の作業場であるアトリエがある。
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