1…画家と化猫

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 マチコが通るために開いた障子を閉じて、部屋の隅にある来客用のお茶セットに赤月は手を付けた。  棚の上にある丸い木箱の蓋をあけ、中にある急須を取りだす。  作業に適した高さになっている棚にそれを置くと、次に茶葉を取り出し急須に入れる。  棚の戸を開けて湯飲みを三つ取りだすと、隅に置かれたポットの湯をそれぞれの湯飲みに少量注ぐ。  温めるように揺らすとポットの隣に置かれたツボにその湯を捨てた。  そして再び湯飲みに均等にお湯を注ぐと、それを茶葉の入った急須へと注ぎかえる。  蓋をして蒸らす間に、黒塗りの盆と茶托を三枚棚から取り出し手早く盆の上に並べた。  慣れた手つきで急須のお茶を湯飲みに注ぐと、布巾で水気を取ったそれを茶托に置き、座っている二人と一匹にお茶を出す。  まずは廊下側に座った基宋に、次いで彼の向かいの隅に座った青年と、彼の膝にいるマチコへ青年より手前にずらしてお茶を出して、青年の隣、基宋の正面に赤月は腰を下ろす。 「さっそくだがな、父黄大僧の命で参った」  茶を一口啜って、基宋は懐から一通の書を取り出し赤月に差し出した。
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