疎まれ屋の少年

3/18
2798人が本棚に入れています
本棚に追加
/790ページ
 手元にある瓢箪へと視線を落しながら、楽陽は汗の滲む眉をしかめる。 「ったく、あの脳筋共。あいつらがあんな余計な事をしなけりゃ、俺はこんなちっこいのを頼って、くそ暑い道なんか歩かなかったっていうのに」  括れから下の部分を握る楽陽の手が、さらにきつく締め付けられた。  瓢箪の中に入った水は、内側から皮へと染み込んで行き、やがて外側の表面より蒸発する。その際、蒸発した水分は周囲から熱を奪うので、瓢箪の中の水は、まるで氷が入っているかのように冷たくなるのだ。  この性質を知った楽陽は、早速それを応用すべく、村の近所で見付けた巨大な竹を材料にして、特大の水筒を作ろうとしていた。  ――だが、完成間近にして、楽陽に悲劇が訪れる。意地悪な兄や姉達に、目の前で試作品含むすべての水筒を破壊され、燃やされてしまったのだ。それも、面白半分に。  自分が作っていた物を壊される。それは楽陽にとって、大変許し難い事だった。怒りで我を忘れた楽陽は、半狂乱で兄達に襲い掛かった。  しかし、楽陽と彼等とでは、体格にあまりにも差がありすぎた。畑仕事で鍛え上げられた肉体の前では、彼の華奢な身体など、赤子の手を捻るようなものだったのだ。  かくして返り討ちにされた楽陽は、あっさりと投げ飛ばされたばかりでなく、父からも面倒を起こした罰として、たった一人で町まで生産品を運んでいく仕事を押し付けられてしまったのである。
/790ページ

最初のコメントを投稿しよう!