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「えっ!?あ、いや……すごい汗だなって。はい、ハンカチ」
紛らすように目をそらして、鞄の中を探り、ハンカチを差し出す。
「いいよ、汚れる」
「ハンカチの用途って他に何があるの」
そう言って、なかば無理矢理、汗を拭う。
先生は黙ってそれを受け入れたと思うと、きゅっと私の手首を掴んだ。
途端にドキッと心臓が跳ねる。
「な、なに?」
「……久しぶり」
じっと見つめられてドキドキする私に先生は染々とそう言うから、胸が詰まって、ただ深く頷く。
「少し太ったんじゃね?」
「先生のバカッ!」
だけど、全てをぶち壊すような言葉が飛び出して、怒鳴り付けると、先生はケラケラと笑った。
「そういや、ずっと聞こうと思ってたんだけど……お前さ。進路のこと、どう考えてんの?」
突然振られた現実的な問いに、緩んでいた心がキュッと締まる。
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