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「ちゃんと道案内しろよ」
「どこにー?」
「どこでもいいから休ませろ」
「もうっ!?」
もう一度、大きな声を出して笑う。
こんなに笑ったのは久しぶりで、楽しくて仕方がない。
「じゃ、そこ右ー」
二人乗りにも慣れてきた私は、足を広げたり、カーブでは先生に倣って同じように重心を傾けたりして、おどけながら道案内をしていく。
「疲れたー!」
大きな公園へとたどり着き、木陰の下の芝生に倒れ込む先生。
近くの自動販売機で買った、冷たいジュースを差し出すと、先生は体を起こして、一気にそれをあおった。
「足が痛えー」
もう一度、後ろに大の字になって倒れ込む先生を、細めた目に映す。
今日の先生は無防備だ。
大人なのに無邪気で、子供みたい。
今までの私が知っている先生は“先生”だったから?
“恋人”になると、こんなにも変わるんだろうか。
なんだか少し、そわそわして、戸惑ってしまう。
「何?」
突然、巡らせていた思考の中に、先生の声が割り込んでくる。
「え?」
「じっと見つめてくるから」
見下ろす私を、先生の方がじっと見つめてくるから、一気に熱が上がる。
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