序章

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わたしは、あの男の子と会っても恥じない人になれてるかな? そんな考え事をしていると、急に体がふわっと浮いた感覚が全身に広がった。 唐突すぎて、一瞬何が起きたか理解できなかった。 しかし、すぐに理解する。 穴が空いていた。 わたしを包み込む程の大きな穴。 それ程の大きな穴が前触れもなくベッドに空いていた。 突然のことに声をあげることが出来ず、わたしはするりと穴の中に落ちていく。 「……えっ」 コンコン 「颯?入るぞ」 視界が自分の部屋から黒に変わる頃、ガチャリとドアが開く。 部屋に入ってきたはずの部長の姿を見る前に、視界は真っ黒になった。 「なっ!?なんだよこりゃ!?おい、颯!!颯!!」 沈んでくわたしが見えたのか、部長が必死に呼ぶ。 必死な部長に答えたくて、ありったけの声で部長を呼ぶ。 「とし兄!!」 叫んだと同時にわたしは更に暗い場所に落ちていった─── 「颯!!!!」 微かに部長がわたしの名前を呼ぶ声が聞こえ、手を伸ばすのと同時にわたしの意識は遠退いていった。 _
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