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「今日のご飯はねー、颯ちゃんの好きな卵うどんよ」
薄いピンクのエプロンをつけ、ふわふわの茶色の髪を揺らした美之さんはにこやかに言う。
さすが部長のお母さんで、綺麗な顔立ちをしている。
「本当ですか?ありがとうございます!」
「ふふふ、早く2人とも着替えてリビングにいらっしゃいね」
そう言うと終始にこにこしていた美之さんは、そのまま台所に戻って行ってしまった。
「おら、さっさと着替えるぞ」
「っ……はい」
こずかれた頭を押さえながら部長を睨むがすでに先を歩いており、恨めしそうに部長を見ながら後に続いた。
───
──────
「はぁー、疲れたー」
夕飯も食べ終わり、お風呂もすませ、自室のベッドに大の字に寝転ぶ。
この家に来て、約1年。
自分に与えてくれた部屋の天井を見ながらふと考える。
"あの日"、生きる理由を見つけた日。
あの日から『役に立つ』ために生きてきた。
運動も勉強も頑張った。
誰からも頼られるように。
その努力のかいもあって、頼ってもらうことはよくあった。
でも、土浦家に厄介になるようになってから不安になる。
自分は本当に『役に立つ』人になれているのか───
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