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「......」
かけられた声に何も答えず、突然現れた少年を睨む様に見る。
そこで、やっとはっきりと少年を見たわたしは、少年の恰好に違和感を感じた。
「......どうして、着物なの?」
少し警戒しつつも違和感を素直に口に出すと、少年は不思議そうな顔をした。
「着物以外に何を着るの?君は変わった恰好をしているね」
淡い青色の浴衣みたいなのを着た少年の言葉に近所で祭があったのかな、と考えたが深く考えずに少年を見つめ直す。
少年は、少し困った顔をしていた。
「ここがどこか分からないんだ。周りが知らないのばっか。皆居ないし......独りになっちゃった」
”独り”
その言葉に、思わず肩が小さくはねる。
目ざとくもそれに気づいた少年が真っ直ぐわたしを見つめてくる。
「.....君も独りなの?」
「......」
何も答えたくなくて、黙って膝を抱えなおす。
すると、明るい声が頭上から聞こえた。
「じゃあ、僕と競争しよ!!」
「......え?」
場にそぐわない明るい声、その内容に、思わず声を洩らす。
驚いてるわたしに構わず、少年は続ける。
「どっちが、沢山の人の役に立てるか競争!!僕がすっごい大好きな人が言ってたんだ。独りが嫌なら、人の役に立ちなさい。そしたら人は答えてくれるって」
目をきらきらと輝かせ、その”大好きな人”の言葉を全く疑わない純粋な瞳の少年が、わたしはとても眩しく見えた。
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