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わたしには、いない。
大好きな人と呼べる人は……いない。
いつも”独り”
「......いいよ」
無意識に、答えていた。
言った後に気づいて、ばっと少年を見る。
慌てて取り消そうとするが、一度放たれた言葉はなかったことには出来なくて、少年は嬉しそうに笑っていた。
「じゃあ、今から始まり!!」
無邪気にそう言う少年を見た時、困ったとか、迷惑とか、そう思う前に、初めて誰かと繋がりを持てた気がして......
心が、温かくなるのが分かった。
そして、それが表情にも出て、無意識に少年に笑顔を向けていた。
その時、何処かでガサッという音がし、気になってそちらに顔を向けようとする。
しかし急に突風が吹き、それは阻まれた。
砂煙が巻き上がり、わたしは手を目にあてて砂が目に入ってくるのを防ぐ。
風が弱まったのを肌で感じ、手をどけて目の前に居るはずの少年の方に視線を向けるけど───
「......あれ?」
そこに、少年は居なかった。
慌てて周りを見るが神社には誰もいなく、いつもの見慣れた神社の景色がただそこには広がっていた。
約束を交わした少女が1人、いつもの様に御神木の下に座り込んでいただけだった───
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