序章

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─── ────── ───────── そういえば、あの子の名前なんだったんだろ。 あの約束をしてから10年、その間一度も、少女は少年に会うことはなかった。 「...ぅら....っ...ら....土浦颯!!」 「......っはい!!」 前からの怒号に反射的に返事をして立ち上がれば、教室内にくすくすと笑いが起こる。 あの時のことを想いだしていたら先生に呼ばれていたらしく、前を見ると先生が般若のごとく怒っている姿があった。 「お前なぁ、俺の話し聞いてたか?」 「え、えーと……」 全く聞いてなかったとは素直に言えず、苦笑いしながら先生を見ると、もはや呆れた表情をしていた。 ……返す言葉もない それを更にごまかすように笑う。 先生は更に小言を言おうと口を開くが、遮るかのようにチャイムが鳴り、本日最後の授業が終わった。 「……はぁー。じゃあ、今日はここまで!!しっかり復習しておけよー」 先生は気持ちを切り替えたらしく、挨拶をすると荷物を持って教室を出て行き、それを見てわたしはほっと安堵の息を吐いた。 _
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