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『仏』と呼ばれる我が弓道部の副部長、山吹春樹-ヤマブキハルキ-先輩は、綺麗な茶髪に同じ色の瞳はいつも柔らかく、部員の心を落ち着かせてくれる。
対する『鬼』と呼ばれる部長、土浦俊之-ツウラトシユキ-先輩は、漆黒の髪は艶やかで、黒く鋭い瞳には部員はいつも萎縮してしまう。
一度熱くなったら止まらない部長を止めるのも、副部長の仕事の一つでもある。
わたしは、まだ睨んでくる部長からツイッと視線を反らすと、副部長の隣に座る。
ぴくっと部長の眉が動くが、気にすることなくミネラルウォーターを口に含み、喉を潤した。
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部活を終えて帰る頃には、空はすっかり暗くなり、夏独特の虫の鳴き声がどこか涼しさを感じさせてくれる。
そんな夜道をわたしは、部長と副部長と一緒に歩いていた。
「すいません。いつも送ってもらって」
左に立つ副部長にだけ顔を向け、お礼を言う。
副部長はちらっと部長を見てからにっこり微笑む。
「全然いいよ。俊之と一緒に帰らすと何かされそうで心配だからね」
「.....おい春樹、そりゃどーゆー意味だよ?」
学校から今まで一言も話さなかった部長だが、副部長の言葉に黙っていられなかったらしく、わたしを挟んで副部長を睨んだ。
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