第一話「カゴメ」

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今改めて思うのだが、バカなりにあんな事をよく思ったものだと思う…しかも臭いセリフもよく吐けた…まぁバカなりの精一杯の応援だったんだろうけども。 「ふむ、イジメではないんだろ?」 「まぁな、あんなくっそ短い遺書はニセモノなのは母親の態度を見たらわかるさ、普通なら死に追いやった奴なんて家に上がらせねーべ、けどなんてこたなく上がらせて普通にペラペラ喋る」 「ふむ、何かを隠しているか…面白いな、シンが食いつくわけだ」 「家庭内暴力なんかなぁと思ってカシとリューで団地内聞き回ったんだが激しい物音とか悲鳴とか聞いた事ない言うし」 「ふむ、違うか…しかし少なからず母親が関与しているのはまず間違いはないだろう…それでだが、なんでその団地の前の木陰に隠れていなくてはならないのだ?」 「刑事物っぽい、楽しい、パンとジュース、あったら、まさにそれ……んで、なにしてるんだ、俺達」 土曜の昼下がり、落ちついた表情で淡々と語る方がコージー、 そして理解不能に陥っているお花畑な方がまっつんは、私とともに遠山キョウコの住む団地の真ん前の木陰に隠れていた。 あとまっつん、あんた木陰からはみ出てるよ。 「いやね、どうせならあんたらも巻き込まれればいいと、こういう事は全員で味わえってこった」 「ふむ、ひと一人亡くなっているのに、あまり感心しないが、 まぁいいだろう」 「コージーが、そういう、俺、そうする、ところで、何してんだ?俺達」 人を張るのは案外しんどいものだ、決まった時間に行動する奴ならばなんの気兼ねも無くいられるのだが、軽く周辺に聞き込みをした結果、遠山キョウコは相当ルーズな性格だという事が想定できた、まぁあんだけ詰めの甘い証拠が山ほど有ればとうぜんなのだが。 なぜ張り込む事をしたのか、先に述べた通り何かしら隠しているのが明白になった以上、彼女自身の行動に必ずヒントがあると踏んでいたからだ。 しかしこの張り込みにはちょっとした弱点がある、張り込む相手、遠山キョウコは私の顔を知っているからだ。 だからこそまっつんとコージーを呼んだ。 まっつんの体は読者が想像しているよりも巨大だ、尾行時は後ろに隠れられる。 しかしまっつんはいかんせん状況把握能力が欠如している、というか事あるごとに訳のわからない言動を起こし、周囲にツッコミを入れられる。 こういう話がある。
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