第一話「カゴメ」

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ある日珍しくコージーが家庭の事情という事でまっつんのお守り(と言ったら間違い無くキレるだろうな)を任された時の事。 いつもいるコージーがいないせいかまっつんは終始動揺していた、巨体に似合わず小動物が警戒する如く、私とカシはそれを面白いとしておちょくっていた。 まぁそんな巨体がいいリアクションしたら、大抵周囲のヤンチャな方々に因縁をつけられるわけで。 ただでさえ近寄り難い私達にも関わらず、それでも因縁をつけるわけだから、相手さんも相当強いという事、そう察した私やカシはめんどくさいので適当に濁してとっととその場所から離れようとしていたが、私のある一言にまっつんが反応してしまう、まぁ「こいつ病院つれていかないと行けないから今日は」ってダシに使ったのが不味かったんだが。 まっつんの全力否定、そして激昂。 言い訳しても収まる事なく、あーどうしようと困惑した時、相手さんの一番強いであろうヤツが「ゴチャゴチャ吐かしてんじゃねぇよっ!」と、まっつんの膝にケンカキックをしてしまう。 普通…体格にもよるが、まともに喰らったら蹲り倒れ、追い打ちも安易となる…まぁ鉄板な喧嘩の仕方である。 しかも図体のでかいまっつんから沈める事をしたこいつは相当喧嘩慣れをしている筈。 しかしまっつん、ビクともせず。 ケリを入れた奴がハッと驚愕する、それもそうだ、想定外な出来事だから。 みるみる顔色が紅くなり、薄目がちな目玉が剥き出しになり、地響きかと勘違いする程の怒号を合図に変わるまっつん。 鬼が、そこに居た。 そこからもうずっとまっつんのターン。 掴んでは投げ飛ばし、掴んでは投げ飛ばす。 ある奴は道路の反対方向まで投げ飛ばされ、ある奴はビルの三階くらいの高さまで飛び上がり、またある奴は至近距離で激突し嫌な音と共に蹲った。 人ってあんなに投げ飛ばす事が出来るんだと実感しどん引すると同時に、もう二度とまっつんをネタにするのは止めようと心に誓う私とカシであった。 話を戻すとしよう。
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