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この時期の寒い風の中、ほっこりと日の光に照らされている、こういう些細な時間の流れがとてもいとおしく感じるコトがある、まぁ歳をとったからかもしれないが。
そんな季節の移ろいさえ考えずにただ寒いと感じていたのだろうな、当時の私は。
そんな気持ちとは裏腹に長時間歩く行為は予想以上に体を暖める、当時は運動に関しては結構そつなくこなしていた。
一方カシはというとお喋り好きというか、終始笑顔だった為唇が歯にひっつく現象がしばしば起こり、それでも喋るからか端から泡がふつふつとでる。
私は心底にはサワカシ(カニ)と呼んでいた、恐らくその呼び名を知られたら全力でキレるだろう。
そんな磯遊びを嗜んだからか、意外に早く現場に着いた。
案の定、落ちたであろう場所に花束や飲み物が乱雑に積んであった。
ネズミ色に煤けている内っ放しのコンクリートなせいか、心なしが赤く染まっていたような気がする、まあ気のせいだが。
「うわ、マジだったんだな…」
カシはぼそっとか細く呟いた。
まぁ今までは生きている人の情報だったから、今回は死んだ人の情報、まぁ後味悪いのも無理は無い。
「シンくんさんや、とりあえず拝んとこ」
手を二回叩きなんまんだぶと呟く、もちろん、
「まちがってはいないとは思うが、何かが違うぞカシくんさん」
と突っ込むのは優しさからくるものだろう、多分いやきっとそうだった。
意見をものともせずに手を合わせるカシ。
まぁ普通はこういう場面はそういうことはするんだろうな…だがなんとも言えない違和感を感じていた、無論意味はないだろうが。
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