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珈琲を飲まない彼女のために、カフェオレを淹れてあげようと思った。
久しぶりにミルクホイッパーを取り出して洗う。
やはりブラックだけは苦手だという幼馴染のために、フォームドミルクに凝ったことがある。きめ細かに泡立てたミルクを注ぐと、砂糖なしでも不思議と甘く感じるのだ。
夕暮れのキッチンに長い影が伸びる。
縦長の窓から、傾きかけた陽が、部屋をあたたかな飴色に染めている。
薬缶の口が、シュウシュウと規則的な音を静かな室内にこだまさせて。
カタン、トン。
コトリ、カン。
ひとつひとつ、戸棚から取り出した道具を並べる。
使い込んだ陶器のドリッパーは白い地が茶色く滲み、傷だらけになった缶は鈍い銀色に、硝子のサーバーは映る景色を折り曲げて。
「ねえ、お砂糖、2個ね」
唇を尖らせたような声がオーダーした。
そんなに甘党だったっけ。拗ねた口調をからかうように尋ねたら、彼女は素直に頷いた。
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