黄昏カフェオレ

2/7
前へ
/10ページ
次へ
 珈琲を飲まない彼女のために、カフェオレを淹れてあげようと思った。  久しぶりにミルクホイッパーを取り出して洗う。  やはりブラックだけは苦手だという幼馴染のために、フォームドミルクに凝ったことがある。きめ細かに泡立てたミルクを注ぐと、砂糖なしでも不思議と甘く感じるのだ。  夕暮れのキッチンに長い影が伸びる。  縦長の窓から、傾きかけた陽が、部屋をあたたかな飴色に染めている。  薬缶の口が、シュウシュウと規則的な音を静かな室内にこだまさせて。  カタン、トン。  コトリ、カン。  ひとつひとつ、戸棚から取り出した道具を並べる。  使い込んだ陶器のドリッパーは白い地が茶色く滲み、傷だらけになった缶は鈍い銀色に、硝子のサーバーは映る景色を折り曲げて。 「ねえ、お砂糖、2個ね」  唇を尖らせたような声がオーダーした。  そんなに甘党だったっけ。拗ねた口調をからかうように尋ねたら、彼女は素直に頷いた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加