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「甘党じゃないけど、苦いのはちょっと、ね」
彼女の声は、金の光といっしょになって、白い壁に反響していた。
ここからリビングを見ることはできないけれど、光が射すように、身近に感じる。
サーバーにあらかじめお湯を注いでひとまわし。温まったところで捨てて、挽きあがった焦げ茶の粉を多めに量る。
立ち昇った香りに頬が緩んだ。この、香り。
「嬉しそうな顔ー」
ふふっと笑みを含んだ声がすかさず指摘した。
完全に無意識だった。
「……別に、」
こんなことで簡単に機嫌が良くなったりはしないのだと示すように、殊更に作業に集中してみたりしたけれど。
「そっけなくしても、だめ。私の目はごまかせません」
勝ちを確信したような彼女の声が、抵抗を完全に封殺した。
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