シュレディンガーの女

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このあたりは高級マンションが立ち並ぶ巨大なベッドタウンになる予定だった。  都心からそう遠くなく、駅までも30分とかからない。自然も充分残っていて静かでいい環境だ。   居住地から駅を結ぶバスも走る計画だったし、映画館やショッピングモールも建設されるはずだった。   しかし景気の落ち込みと共にそれら全ての計画が止まってしまった。川島と同じで杜撰な計画だったのだ。  建設途中のマンションはそのまま放置されている。電灯は完成したマンションの周囲にいくつかあるだけだ。   車通勤でこれまで考えた事はなかったが、夜道はかなり暗くなるだろう。 由紀子に気をつけろと言わないといけないな。 車の修理代。いくらになるだろうか。国産の新車が楽に一台買えるだろう。 廃車にするしか道はない。知り合いの業者に安くしてくれるように頼むか。   川島はぼんやりとした頭のまま、そんな事を考えながら歩いた。
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