赤いチューリップ

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勉強は得意じゃないし、部活は美 術部のはっきり言って地味で目立 たないおれはクラスでも浮いてい て特別仲の良い友達もいないから 大抵一人でいることがほとんど。 一方この皮肉屋は大層饒舌で口が 上手いから知り合いは多い。特に 女の子と仲が良い。つまるところ、 凄くモテる。 「和依またうちのクラス来てる~」 「ねぇ最近なんでメール返してく んないのよー」 クラスの女の子達がきゃあきゃあ 騒ぎながら集まってくる。 「俺だって暇じゃないのー」 「何よ、遊んでばっかのくせに」 「色々やることあんだって」 「えーまさか彼女できたの?」 「いねーっつの」 「じゃあアタシ立候補しよっかな」 「えーズルーイ私も!」 「はいはい、とりあえず予約制ね」 「最低~!」 うるさいなぁ。 喧しくて嫌気が差す。 わざわざ見せつけるかの如く目の 前で繰り広げられる光景にイライ ラして仕方ないのに「他でやって くれ」ってその一言が言えない自 分にも腹が立つ。 大きくひとつ溜め息を吐いてから またスケッチブックを開いたら、 丁度授業が始まる鐘が鳴った。 「じゃあね、惺」 散々女子と楽しそうに会話してた くせに、そいつはおれにだけそう 言って教室を出ていった。 後ろの方でヒソヒソと話し声が聞 こえる。 皆不思議なのだ。 どうしてあいつがおれにかまうの か。 おれなんかと居ても何ひとつ楽し いことなんてないだろうに。 あいつは友達だって沢山いるはずなのに。 どうしておれなんだろう。 .
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