猫と彼女

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無月 それが彼女がくれた僕の名前。 リーン、リーン… それは彼女と僕を繋ぐ鈴。 僕は彼女に出会うまで、生きるか死ぬか…いわば弱肉強食の世界にいた。 闘いを挑まれれば受け、僕を欲すれば望むまま与えた。 僕にとって生きること以外どうなろうとどうでもよかった。 そんな僕の前に彼女は現れた。 その時の僕には彼女は敵以外何者でもなかった。 威嚇し、彼女を初めて傷つけた。 紅く綺麗な血が彼女の手を伝って流れていく。 彼女はそんな俺に怯えて逃げる事もせず、ジッと僕を見つめ手を差し出した。 僕にとって闘うためでもなく、欲するためでもなく無償の愛で受け止めようとしたのは彼女が初めてだった。
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