3964人が本棚に入れています
本棚に追加
壁から壁に。
柱から柱に。
まるで忍者の如く素早く移動する。
先頭をきったうちの任務は、まず安全を確保して隊員を誘導することだ。
壁に背をべたりと付け、廊下の角の向こうに鬼の気配がないかをチェックし、安全だと分かったら、後方にいる隊員達を手招きする。
「俺、どうなっても知らねぇからな」
「一人は皆の為に!! 皆は一人の為にという言葉があるじゃないか!!」
「ここで使う意味が分かんねぇな。ゴリラ女は馬鹿ばっかだ」
文句しか垂れない不甲斐ない隊員達め!!
だがその隊員を纏めるのが隊長たる藍川直の務め!!
文句を言いながらもついてくる隊員達を引き連れて、まずは台所に向かい、覗いてみる。
「…………」
「鬼はいたか?」
「……いない」
鬼はいなかったよ。
いなかったけど、代わりに……九一さんがいました。
その九一さんはおにぎりを握っていて、そのおにぎりからにぼしさんの顔が沢山覗いていて……。
にぼしたっぷり鉄分満載のおにぎりがうちのおやつにならないことを祈りながら、台所を後にした。
そして次に向かったのは道場だが……。
「俺の方が凄ェぜ!!」
「まだまだだな高杉!! 見よ!! この芸術ともいえる肉体美を!!」
「俺の引き締まった尻の方が芸術だぜェェェ!!」
「…………。
…………何やってんだぁ?」
「み、見なかったことにしよう」
うん。
これも見なかったことにしよう。
道場の真ん中で何故か褌姿になり、マッスルポーズをしながら己の筋肉を自慢しあっている晋作さんと有朋さんなんて。
道場から離れながら、ふと、不安になった。
奇兵隊って、大丈夫なのかな?
いろんな意味で。
最初のコメントを投稿しよう!