四天王の思い出

3/15
3962人が本棚に入れています
本棚に追加
/217ページ
親や大人というものは、喧嘩に口出しはしないものの、相手が身分の上の者となれば話は別となる。 晋作は煩くて馬鹿で愚脳で最悪で……もう最低な奴でしかないけど、親は藩に仕える武士であり。 その子供である晋作も武士の子として、身分は上だ。 足軽の親の子である俺より、遥かに上。 足軽の子が武士の子に手を出し……しかも流血沙汰となれば、相手が悪いにしろ、責められるのは格が下の者と決まっている。 なのに松陰先生という人は……。 「穴に埋めますか? 焼いて灰にしますか? ああ!! 今から川に行くのだから、流しちゃいましょうか!!」 物騒なことを人の良い笑みで簡単に言ってのける。 だから、このあばら屋のような学び舎に集まる塾生達は、身分なんて関係なく……。 「晋ちゃんぶさまぁ!!」 「先生!! ついでに俊輔も殺りましょうよ!!」 「何で!?」 「……目障りだからだ」 笑い合ってる。 師も、子も、武士も足軽も……何にも関係無しに。 「栄太郎君? どこに行くんですか?」 「義助には関係無いよ」 それが俺には合わなくて、隣に座る義助を横目で睨みつけながら席を立った。 この塾は、いつ学ぼうがいつ帰ろうが、基本自由だ。 好きな時に好きなだけ学ぶ。 それが松陰先生の方針らしく、朝から学びに来る奴もいれば、晋作みたいに他の学び舎と掛け持ちしてる奴もいる。 笑い声を背中で聞きながら、部屋から出ようとした。 「はい。栄太郎捕獲」 ……肩を掴まれた。 最悪。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!