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「どのくらい愛しちゃってるか聞きたいですか?」
「まったく聞きたくない」
「そうですね~。栄太郎を抱き締めて接吻したい程に愛しちゃってますよ! うふ」
「気持ち悪い。聞きたくないし気持ち悪い」
「ああ……そんな辛辣な言葉も全身全霊で受け止めますからね!」
「…………」
ああ、もう……何なんだよこの人は。
大の大人だというのに気色悪いことを笑っていうし、気持ち悪い風に言うし……。
本当にどこかに行ってもらいたい。
……でも、軽々しく愛してるだの何なのと言う割には……何故俺に力を振るわないわけ?
それが知りたくて、一度知りたいと思ってしまえば聞かずにはおれなくなり、横目で松陰先生を見た。
「松陰先生はどうして……晋作みたいに俺を殴ったり……その、しないわけ?」
「知りたいですか?」
「教えてくれないなら知りたくない」
大人のくせして無邪気な笑顔を向けてきたもんだから、視線を水面にと落とした。
そんな俺の頭に……大きな手が、落ちてくる。
「こうやって頭を叩くのも、多少なりとも力は入ってますよね。だから勿論、栄太郎にも愛ある力は向けてるんですよ?」
ぽんぽんと軽く叩く力は、晋作に向けられるものとは全く違う。
……けど、松陰先生からしたら……同じ力。
加減は違うとしても、同じ力なわけ?
「栄太郎。力は様々なんですよ? 人を殴ったり蹴ったりするだけが力じゃない。
言葉一つ一つにも力は混ざっているし、視線一つにもそれは同じ。
その形の違う力に、どんな思いを込めているのか、が大事なんです」
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