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この人だから、沢山の人が集うのだろうね。
この人だから、沢山のものを学びたいと思うのだろうね。
この人だから、嫌な気持ちにならないで傍にいれるのだろうね。
この人だから、集った奴等ともやっていけるのだろうね。
「松陰先生」
「何ですか?」
「俺は松陰先生が大事だから」
「栄太郎……。嬉しい言葉ですね。私も栄太郎が大事ですよ」
大きな手の感触がくすぐったくて、松陰先生の言葉がくすぐったくて、胸の奥がほっこりするのを感じながら、小さく笑って。
欲を言うのならば、松陰先生を独り占めにしてしまいたい。
でもそんなことをするのは子供じみているから、たまにこうやって独占するだけでいい。
「いつか、栄太郎の傍に常にいる子が出来ますからね」
「……俺の心を読まないでくれる?」
「栄太郎は分かり易いですからね。さ、下で遊ぼー!!」
分かり易い、ねぇ。
顔に出したつもりなんてないし、顔に出ない方だと思うけど、松陰先生には何でもお見通しなのか。
それがちょっと癪でもあるけど……ま、今はいいか。
あれやこれやと考えるのを中断して、松陰先生に続いて岩の下にと降りた。
「おっせェよ馬鹿太郎!! 魚捕まえるぞ魚!!」
「誰に向かって馬鹿って言ってるわけ? ああ、魚の餌は牛の切り身でいいね」
「あ? ちょっ……え、栄太郎!? 懐から懐刀出すぎゃァァァ!!!!」
「ぶふっ!! あは、あはは!! 晋作君、口は災いの元ですよ」
「……川が真っ赤だ」
「ふぅむ。見事な赤い川ですね。では皆さーん!! 屍が流れてきたので帰りまーす!!」
馬鹿みたいなこんな日々。
でも、俺も馬鹿になったような、そんな日々……。
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