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「ぎゃァァァ!!!!」
藩邸を揺らす程の絶叫をあげるのは……うん。考えなくても直ぐ分かる。
しかしその声が目覚まし時計代わりになろうとま……本日はなんて嫌な一日の幕開けなんだろ。
寒い季節、天国と化している布団の中からもそもそと這い出ると、どたどたとした煩い足音が部屋の外から聞こえてきて。
あ、何だか嫌な予感。
なんて思った時には、すぱーん!! と、壊れんばかりに襖が開き、冷たい風が部屋の中にと流れ込んできた。
ぶるっと身震いすれば
「ととと稔麿ォォォ!! ででで出たんだよ!! 俺の部屋に出たんだよ!! 幽霊が!!」
そんな叫びが衝立の向こうから聞こえてきて。
へえ、幽霊が出たんだ。
…………て、ゆゆゆ幽霊っ!?
「朝から南無阿弥陀物南無阿弥陀物!!」
「塩!! 数珠もいるか!? 恐ろしくて部屋に戻れねェよ!!」
「安心しなよ。部屋に戻る必要はないから」
幽霊に対する恐怖におののいたうちの体は勢い良く立ち上がり、念仏を唱えていれば……。
うはぁ……幽霊より恐怖を煽る声を聞いたような気がするんだけど。
ぞぞぞっとする悪寒が背筋をかけ上がり身震いをまたすれば、うちは朝から聞いてしまいました。
「その刀で幽霊をばっさり殺ってくれ……よォんぎゃァァァ!!!!」
「まずは目障りな牛を殺らないとね」
ひいぃぃぃ!!!!
衝立の向こうから何かが斬られる音と、何かが噴射する音が嫌という程に聞こえてきたんだけどぉぉぉ!!
間を置いて、畳の上を赤い何かが流れてきたんだけどぉぉぉ!!
衝立の向こうに行く勇気がありませぇぇぇん!!
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