別嬪さんは強運の持ち主でした!!

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……さて。 静寂が戻ってきた部屋で、今からどうしようか? このまま立ち尽くしていても何も始まらないし、何より、何もしなかったら次に畳を赤く染めるのはうちの血……ということになりかねない。 というか、あの閻魔様のことならしないわけないから、とりあえず畳を新しいのに代えなければ!! だがしかぁぁぁし!! 血濡れになってしまっている畳のかずは二畳!! 二畳を一度に運ぶなんて、か弱い乙女であるうちにとっては不可能に近いミッションであり、どうしたもんかと、血濡れ畳の前で腕を組うんうん悩んだ。 ……こうなりゃあ、誰かを巻き添えにするか。 しかし誰を巻き添えに? 九一さんと玄瑞さんは牛と小五郎さんの虚勢手術中だし、すなわに実験体になった二人を誘うわけにはいかない。 先生なんて論外だし、潤次郎さんはここに住んでるわけじゃないから毎日はいないし、織江さん常に半身を隠しているから畳運びなんて出来るわけないし。 …………残るはあの野郎しかしないな。 ふっと微笑むと、殺人現場にしか見えない部屋から飛び出して、あの野郎を探しに藍川直は発進した。 「なんで俺が雑用しねぇといけねぇんだっつうの!! おめぇは藩士である俺を馬鹿にしてんのか!?」 「馬鹿になんかしてませんよ!! あれ? もしかして藩士は畳代えが出来ないんですか!? 藩士なのに!?」 「馬鹿言うんじゃねぇっての!! 藩士たる者畳代えなんて朝飯前だ!!」 だなんて、前髪の合間から額に浮かぶ青筋を覗かせ見せ、悪態つきまくりの松助さんは血濡れ畳を剥がしてくれている。 見た目ヤンキーで、口調もヤンキーで、態度もヤンキーでしかない松助さんを巻き添えにし連れてきたはいいが。 うふふ。 この人の扱い覚えたり!!
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