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長州から京にやって来て、京にある長州藩邸でくらすようになってしばらく。
最初は、なんじゃこりゃぁぁぁ!!!? な驚きの連発だったものの、今ではすっかり慣れてしまった京の街並みに京の生活。
京の街は物騒であり、首無し首だけ、部位無し部位だけ、なんでもござれ、なんて怪談並の恐怖話をされたけど。
長州藩邸の中は至って平和な
「ぎィやァァァ!!!!」
至って平和な……
「や、止めろ稔麿ォォォ!! 刀を、刀を振り回すんじゃねェ!!」
……少し訂正します。
平和なのだけど赤い平和に包まれておりました。
それは一歩踏み外したら地雷を踏んでしまうかのような、際どい平和に。
「今日も平和ですねぇ」
「そうですねぇ」
あの断末魔のようなあるお方の悲鳴を離れた場所から聞いておきながら、部屋で書き物をしている玄瑞さんはのほほ~ん。
それにつられて、側で縫い物をしていたうちも、のほほ~んと返事を返した。
断末魔の持ち主である暴れ牛こと高杉晋作さんの悲鳴は、うちらがこっちに来てからというものの、すっかり長州藩邸の日常と化している。
長州藩邸に住む長州の皆さんは最初こそ何事だ!? 何事だ!? と驚き慌ててはいたが、毎日のように続けば嫌という程に慣れちゃうもの。
うん。
慣れって、素敵だね。
「……直」
「あ! おかえりなさい九一さん!!」
和やかな雰囲気でちくちくと縫い物をしていれば、襖が開いてひょっこりと九一さんが現れた。
藍色の着流しがよく似合い、緩く縛った髪を肩から胸にと垂らし、寒さが身に染みる季節だからその上から白い着物を羽織っていて。
今まで街にと出掛けていた九一さんを、部屋の中央に置かれた火鉢にと、促した。
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