髪結い紐の秘密

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はぁぁぁ……。 今日は厄日だ……。 うん。厄日に違いない……。 晋作さんのモザイクもんのものを見てしまうわ、九一さんに抱きついてしまうわ。 先生にあんなことを要求されるわ、お客様は神様な筈なのに店員さんに追い出されるわ……。 極めつけは…… 「うち、団子一個も食べてねえし……」 店の外に並べられた長椅子に腰掛けて、長い長~い溜め息を盛大に吐きながらうなだれた。 目の前の賑わう通りとは裏腹に、うちの心は荒み。 吹き抜ける冷たい風がささくれさせてくれる。 虎猫の飼い主を探す前に、うちは人の優しさを探したくなりましたよ……。 てか、京の女性って……恐ろしい。 そんなことを泣きそうになりながら思っていたら 「いだぁっ!?」 頭に何か落ちてきたぁぁぁ!!!? 店員さん達の次なる仕打ちか!? 次なる仕打ちなのかぁぁぁ 「にゃう」 て、あれ? 「猫ちゃん……」 頭に乗っかかってきたのは虎猫で。 その虎猫を持ち上げ膝の上に座らせると……。 あれ? あれれ? 前にも……こんなことが、あったような? 店員さんから店を追い出されとかそんなんじゃなくて、ちょっと気を沈ませていた時、頭にこうやって猫が……。 …………。 「ああああああ!!!!」 「にゃっ!?」 思い出したぁぁぁ!! やっと思い出したぁぁぁ!! この虎猫!! 先生が熱射病で倒れた時、ちょっと不安を抱いたうちの頭に落ちてきた猫だ!! そうだよあの猫だよ!!
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