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ほ~ほけきょ!
だなんて、春の風物詩なるものをのほほ~んと聞いていたある日。
午前中の女中業を終わらせ、美味しい昼食も済ませ。
さぁておやつの時間にでもしますか!!
そんなうっきうき気分でいる筈の時間帯に藍川直は現在……。
「聞いてるわけ?」
「聞いてます聞いてます聞いてますぅぅぅ!! 耳の穴かっぽじって、聞きたくない長話を聞いてますぅぅぅ……あ」
「へぇ。聞きたくない、んだ? 反抗心は早めに摘まないといけないね」
「ぎゃぁぁぁ!!!! 誰かお助けをぉぉぉ!! 胸が……豊満な胸が潰れっぐへっ」
「腰だけど。それに胸はもとより潰れてるよね」
「ぐはぁっ」
肉体的にも精神的にも多大なダメージをいただいた。
直ぐ目の前にいて、妖艶で不敵な笑みを浮かべる吉田稔麿のこんちくしょーによって。
……そう。
只今藍川直は、京にある長州藩邸で、吉田稔ま
「何か癪なこと考えてない?」
「考えてません考えてません!!」
ひいぃぃぃ!!
あなたはエスパーですか!?
小姓の分際で主たる先生を内心では呼び捨てにしていた……しかけていたのを読まれていたなんて……。
ぶんぶんと勢いよく首を横に振って、おとなしくすることに徹する。
……でも、でも!!
何故振袖の帯ってこんなにきついんだぁぁぁ!?
そうなのです!!
只今藍川直は長州藩邸の一室にて、春の風物詩を聞きながら、何故か!!
先生に振袖の着付けをやられているのです!!
「うん、いいですね。直ちゃんはやっぱり振袖が似合いますよ」
「馬子にも衣装ってやつだよね」
「全く稔麿君は……素直に可愛いと褒めてあげたらどうですか?」
「馬鹿だね玄瑞。可愛いんじゃなくて、綺麗な方が当てはまるから」
な、ななななんですとぉぉぉ!!!?
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