1452人が本棚に入れています
本棚に追加
/654ページ
一瞬、吐き気と立ちくらみがして わたしは手で口を覆ってその場にしゃがみこんだ。
『…諏訪さんの… 奥さん……』
弓削さんとの出来事がスライドショーのように頭の中を駆け巡っていく。
そしてすべての事が ゆっくりとわたしの中で繋がっていった。
…『もうすぐあたしのところに戻ってくるの。』…
あの日の弓削さんの言葉を わたしは思い出していた。
弓削さんは今でも…
諏訪さんの事を 想っていたんだ。
だからわたしと諏訪さんの事を誤解して あんな事をしてしまったんだ。
『本当に すまなかった。』
ぺたんと床に座り込みうなだれるわたしに 諏訪さんは力なくそう言った。
その後、しばらくしてから 諏訪さんは仕事に戻っていった。
少し時間が欲しかった。
きっと諏訪さんも わたしと同じ気持ちだったのだろうと思った。
気がつくと 頬を涙が伝っていた。
わたしはそれを指先で拭い 手で顔を覆いながら 声を漏らして泣いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!