1452人が本棚に入れています
本棚に追加
/654ページ
『ご注文 お決まりですか?』
何にしようか迷っていたわたしは 店先に置かれていた黒板に書いてあった「本日のおすすめ」の紅茶を注文した。
『今日はブルーベリーティーになりますけど、よろしいですか?』
『はい。』
そしてニコリと笑ってカウンターの中に戻っていった店員さん。
他に店の人の姿はなく その女性が一人で営業しているようだった。
その日仕事が終わってから 会社の近くの小さなカフェで わたしは諏訪さんを待っていた。
一件だけ打ち合わせが入っていて 少し遅れるかもしれないからと ここで待つように言われたのだった。
今までに何度もこのお店の前を通った事があり カフェだということは知っていたが 今日初めて中に入ってみて アットホームな店内に居心地の良さを感じていた。
少ししてから 紅茶を運んできてくれた店員さんにわたしは思わず 話しかけてしまった。
『素敵なお店ですね。』
『ありがとうございます。』
『おひとりでされてるんですか?』
『ご覧の通り 小さなお店ですから、わたし一人で十分なんですよ。』
そう言ってまた優しく笑った。
わたしの前に置かれた小花柄のティーカップからはブルーベリーの甘酸っぱい香りがしていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!